虹の袂には願いの叶う金の壺が埋っているのだとか…

決め事 と 約束

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自分にはたまに思い描く漠然とした情景があった。

若い頃、二人でバイクを整備した庭先の駐車場に面した窓辺に腰掛けて、老人がお茶を飲んでいるんだ。暖かい日溜まりの中で。その傍らにはまだ初老の女性がちょこんと正座していて、笑顔で話しながらあずきという名の犬を撫でている… そんな情景。


ふたりの間にはそれぞれ決め事があった

彼女には 『未来が見えたら一歩踏み出すこと』
自分には 『その時が来たら送り出してあげること』

加えて、それに相反する『いつまでも傍にいる』という約束もあった。


そして6年間という歳月を共にして、今月ふたりはその決め事を実行した…


必然的にその約束は反故されることになる

でもその反故にした約束の反動は大きすぎた。
送り出すために別れを告げられた彼女は失意の底で悲しみ、告げた自分はかけがえのない彼女の存在を痛いほど感じることになる。
なぜなら、ふたりには約束というより 心からの願いだったから。



男は夢を見て生きていける…
女は現実を見ないと生きていけない…



彼女も確かな夢があれば今の選択はなかったのだろう。
彼女が泣きながら今の想いを伝えてくれた…
彼女の気持ちは痛いほどわかっている。
その気持ちを分かってなければ、6年間も彼女の愛を受け止めることは出来なかったから。
彼女がいつも笑顔でいられるように願い、そして努めた……

はずだった。

この最後の一年間は本当に辛い想いをさせてしまったんだ……
自分に余裕がなかったために…
一番傍にいなければならなかった時期だったのに…
受け止めるなら最後の最後まで笑顔でいさせてあげるべきだったのに。

それでも今は砕いてしまった彼女の欠片を
集めなくてはならないんだ。
まだ彼女には自分が、自分には彼女が必要だと思っているから。今はまだそう信じていたいから。

そして一番の理由は…
もしも、もしも…それが万が一の確率でも、彼女が飛び立てなかった時、次に羽ばたくまでの『とまり木』にまたなれるように隣にいたいから…

そう、始まりはここからだった…
「羽ばたける時が来るまで『とまり木』になるよ」
その一言がふたりの始まりだったんだ。

そして今は……

出来ることならば、ずっと傍にいてもらいたいと願う自分がいる



5年前の誕生日
彼女は何をお願いしてるのだろう…
自分はそのうちの一つでも叶えてあげられたのだろうか……